(株)MMJ 創立20周年を迎えました。ありがとうございます。
2002年8月末にMMJのホームページをネット上に掲載した。9月には5社の乳業から問い合わせがあった。全く存じ上げない遠方の乳業もあった。
「一台でもいい送ってくれ」と契約もそこそこに数台仕立てて送った憶えがある。その年12月14日に会社を創業、今月で20周年を迎えた。
JAをバックに強大な政治力を持つ生乳指定団体の傍ら、支持して頂いている多くの酪農家と乳業に支えられながら、両者にとって頼れる第二の選択肢を提供してきた。
創業当初より取引頂いている関係者の方々には心より感謝いたします。
創業当初、業界では生乳が逼迫していた事もあり、中小乳業は所在の指定団体からの生乳では到底賄いきれず、夏の需要期には欠品に次ぐ欠品で大変な事になっていた。
(株)MMJ(ミルクマーケットジャパン)はこの前年の8月に創業した(株)Lactex(注1)の販売先確保の為に創った会社であったが、HPを立ち上げた直後から全国的に引き合いが有った。当時アウトサイダーと云われる酪農家グループから販売先の信用問題や交渉の不全、輸送や品質管理の問題など様々寄せられた。
生乳の自主流通には全国展開しているグループが無かった。
アウトサイダーを選択した時点で業界から忽然と姿を消したように見えなくなってしまうという事実に驚愕した。
全国組織である牛群検定事業の参加資格剥奪、業界紙には全く掲載されなくなり、自治体によっては酪農家リストからも削除されていた。販売先の選択は自由なはずの生乳だが、その差別的業界の対応には驚いた。
2019年4月1日より、この指定団体を支えていた加工原料乳補給金制度が50年ぶりに改正施行された。
それまで系統出荷といわれる指定団体に出荷している酪農家は、ほとんど無条件に生乳の全量委託販売を強制されていた。全国の生乳の98%を占める。前述の自主流通(アウトサイダー)を選択した農家は不退転の覚悟を持って自主販売を選択していた。
法改正後、指定団体と自主流通の加工や複数出荷が自由になった。
現在、加工原料乳補給を申請する1号〜3号事業者は86件にもなる。
今、北海道を中心に生乳の生産抑制が叫ばれている。実際に自主廃棄を迫られ、大量の生乳が廃棄されている状況が報道に載っている現況には心が痛む。
ただ、報道の中には、指定団体出荷の生産者が過酷な生産抑制を受けている中で、自主流通を選択して「自由に生産拡大、販売している農家がいる、不公平ではないか」という一部の世論を取り上げる意見をよく見る。
しかしながら、実際にそうであろうか?
法改正の最終局面の2018年11月、旧指定団体は加工原料乳補給金を割いて「集送乳調整金」を取得した。
法改正後、弊社も案内をもらい申請したが、認められたのは旧指定団体だけであった。
既得権益を守ったのである。
だが、同時に、全国のほとんどの生乳を掌握している事から「どんな山奥であろうと遠隔離島であろうと、その量の多少に関わらず、あまねく集乳する」事を確約した。
年間計画で指定団体出荷を希望すれば「断る事はできない(注2)」のが指定団体である。同時に「需給調整機能を持つのは指定団体だけである」と示された事は記憶に新しい。
国は集送乳調整金に過去4年間で329億円拠出している。この事実が報道されていない。国の見解として「指定団体に需給調整機能を任せている」としている。また「年度毎の計画で有れば、農家に依頼された集乳を断ることはできない」としている。生産余剰は理由にならない。
一方で今期、期中での飲用乳、加工乳の乳価交渉を指定団体は行なった。11月には飲用乳を、来年4月には加工乳をそれぞれ10円/kgの値上げを交渉、妥結していただいた。これも全国のほとんどの生乳を掌握している指定団体だから成せる事である。
自主流通に携わる組織であるMMJとその出荷農家は役割が違うと考えている。「自主流通にも生産抑制を・・・」はお門違いな要求である。
前回の生産調整(平成18年)でも北海道から九州まで各地の生産者に呼ばれて、生乳集荷の依頼や組合への対応など忙しかった。今回はさらに餌の高騰という未曾有の酪農危機が重なっています。
弊社の20周年を祝いたいところですが、情勢が落ち着き、酪農、乳業が安心して経営に取り組んでいただけるよう、暫くは尽力して行きたいと思います。
取扱乳量は全国の2%足らずですが、契約農家、乳業様に信頼される生乳の自主流通として独自の需給調整と販売網を築いて行きます。「契約数量をしっかり買い取り販売する」当たり前の事ですが生乳はナマモノ、液体、デリケート、そして何より米、食肉に並ぶ主要食品原料であります。
酪農家が安心して乳牛を飼い、経営に邁進できるよう契約します。
「全てを満たす」とは申せませんが、乳業様には安心できる生乳を過不足なく供給できるよう尽力して行きます。
来年こそ業界が好転する事を祈念いたします。
2022年12月26日
株式会社 MMJ 代表取締役 茂木修一
(注1) 2001年、群馬県の5軒の大型農家で構成された自主販売会社。現在もMMJと協調関係にある県内酪農自主流通(茂木がコーディネート)
(注2) 年間契約で季節変動(1割程度)の範囲の変化である事。事業のその物の拡大、縮小に伴う物。